
吹割の滝の滝つぼは昔から竜宮へ通ずるといわれていた。そして、村で祝儀などの振舞ごとがあるたびに、竜宮から膳椀を借りていた。必要になるとお願いの手紙を書いて滝に投げ込み、渦に巻き込まれて深い竜宮へと吸い込まれていき、前日には頼んだ数の膳椀が傍の岩の上にきちんと置かれていた。三日のうちにお礼の手紙をつけてもとの岩の上に置けばいつの間にか見えなくなり、竜宮へ返された。 ところがある年のこと、借りた膳椀を返すときに数を間違えて一組だけ返し忘れてしまった。竜宮では貸した膳椀が不足していることを知り、以後いくら丁寧に頼んでも借りられなくなってしまった。
今でも、この膳椀は竜宮の椀とよばれ、大切に保存されている。